〈報告・前編〉琉球弧の島じまは最前線に位置しているのではない6.27官邸前宣言

 


みんな、もっと多くの宣言を!

「宣言が足りない」と言いました。今回の官邸前行動は「官邸前宣言」という初の試みでもあります。いま、あまりにも、議論の土俵というものが軍拡勢力側に支配されていて、報道機関もその土俵の上で記事を書き、私たちも用意された土俵の上でばかり議論させられている、という感じがします。その中で私たちの意見は定型化され、両論併記(を装った)の記事の中で「反対派」の役割を演じることで終わる恐れがあります。宣言をするということは、そこに議論の土俵がうまれる、ということでもあります。議論の土俵や前提を取り戻していくために、これからもどんどん宣言を行っていきたいと思います。



この日は「官邸前宣言」の前に、「島々から呼びかける 全国を戦場にさせない!東京行動」実行委員会主催で、4時間半にわたって、院内集会と政府要請が行われました。まず、「島々を戦場にさせない!」ばかりか、「全国を戦場にさせない!」とまで島じまの方々に言わせてしまったこと! それを訴えるために、与那国島石垣島宮古島沖縄島奄美大島種子島福岡大分京都の方々が東京に結集し(福岡、京都はオンライン参加)、切実な声…怒りの声…悲鳴のような声…を上げたこと!を重く受け止めます。

「東京行動」の方々は、引き続き官邸前行動にも参加してお話を聞かせてくださいました。ありがとうございました。



〈報告〉
琉球弧の島じまは最前線に位置しているのではない6.27官邸前宣言

呼びかけ:島じまスタンディング、STOP大軍拡アクション
6月27日(木)18:00~19:00過ぎ 首相官邸前/国会記者会館前 参加約35人


司会:Fujikoさん(島じまスタンディング)

…向こう(衆議院第一議員会館)で、今日は1時から、島じまの方たちのお話を聞かせていただきました。政府要請では、あまりにもひどい回答ばかりで、聞いている私たちも本当に腹が立ちましたけれども、島じまからお金もかけて時間もかけて、労力使って来て下さった方たちは本当に、腹が立ったことだと思います。島じまの方たちの切実な思いがひしひしと伝わる中、あまりにもひどい回答に腹が立ちました。

島じまの人たちは、ただ静かに暮らしたいだけ。静かで平和な島の暮らしを、「防衛」と言ってミサイル・弾薬庫を持ち込み、危険にさせているのは、防衛省!あなたたちです。今から、ミサイル基地も、すべて撤去してください! それではまず、「宣言」を…


宣言:石井信久(ブログ筆者/島じまスタンディング)

…きょうは「琉球弧の島じまは最前線に位置しているのではない宣言」ということで、いま私は、「南西諸島が最前線」だと、あまりにも気軽に、あたり前のように、言われてしまっている現状に、ほんとうに強い危機感を持っています。かつて、「海の生命線」だとか「絶対国防圏」だとか、言われていました。それに相当する言葉が、いまの「南西諸島は最前線」だと思っています。そしてこの「南西諸島が最前線」だということに、誰も疑いを持たなくなったとき、誰もが疑いなく平気で口にするようになってしまったとしたら、その時はもう完全にこの国は戦時体制に入っているだろうと思っています。

きょうはこちらの国会記者会館に向かっても抗議していきたいです。これまで、10年近くにわたって、日本の報道機関は、南西シフト・琉球弧の最前線基地化というものを、ほとんど報道しない、報道しないことによって、戦争協力をしてきたと、思っています。それが、いまのこの段階になって、基地が与那国・石垣・宮古・奄美に造られた後で、南西シフトが次の段階・全国的な戦争態勢へと移っていくこの状況になって、「台湾有事」だとか「住民避難」だとかの宣伝と一緒に、「南西諸島は最前線」であるっていう宣伝を行っていくのだとしたら、さらに最悪の戦争協力になると思っていますので、官邸に向かって、そして記者会館に向かって、宣言文を読み上げます。



【琉球弧の島じまは最前線に位置しているのではない宣言】

「本土」と呼ばれる島から琉球弧の島じまへ向けられる視線のありようが、戦争をつくってしまう。いま私たちが向き合わなければならないのは、そのような事態だ。


2024年4月10日、日米両首脳は「南西諸島を含む地域における同盟の戦力態勢の最適化」の進展を歓迎し、この取組を更に推進することの重要性を確認した(共同声明)。

琉球弧の軍備強化=「南西シフト」は、島じまを守るためでも、日本を守るためでもない。米国の西太平洋地域における覇権と、それに付随する日本の権力・利権構造を維持・強化するために、島じまを利用するものだ。

それは東西冷戦後「再定義」された日米安保体制のもとで、2000年頃、自衛隊の「島嶼防衛作戦」の策定として始まり、2010年以降次々と打ち出されてきた「第一列島線・第二列島線」を利用する米国の対中国戦略構想をベースに、与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島への自衛隊新基地建設や沖縄島の部隊再編・増強として具体化されてきた。そして「南西シフト」は次の段階へ向かっている。

2022年12月「安保3文書」策定。この〝5年で43兆円〟の大軍拡計画で「反撃(=敵基地攻撃)能力」「継戦(=持久戦)能力」の保有が掲げられた。琉球弧の約40ヶ所に臨時の攻撃拠点を設け分散展開する「日米共同作戦計画」の原案は2023年末に完成したという。「持久戦」を想定した全国の基地強靭化・弾薬庫増設・民間空港や港湾の軍事拠点化等と同時に、琉球弧の島じまを「最前線(=敵の射程圏内の戦域)」として新たな戦争構想に「最適化」する作業が進められている。


「石垣島をはじめとする先島諸島は、我が国防衛の最前線に位置します」…2023年4月、浜田防衛大臣(当時)は「石垣駐屯地」開設式典でそう言った。

軍事緊張が高まっている、その最前線は南西諸島だ。国境の島々で、台湾にも近い。尖閣諸島がある。中国が海洋進出している。南西諸島は最前線に位置しているのだから、軍備強化は当然だ/仕方ない。…このような認識が、なかば常識化しつつある。

5月のエマニュエル駐日米大使の与那国島・石垣島訪問に関する記事で、時事通信社は「最前線の地域を大使が訪れるのは異例」と書いた。あたり前のように、それがもともと島に備わった属性であるかのように、「最前線の地域」と。こんなふうに、メディアは日々、戦争協力している。

「台湾有事」などの危機煽動の浸透と「南西諸島=最前線」の常識化によって、これまでほとんど報道されずに進められてきた「南西シフト」を人びとが「理解」し、日本全体の戦時体制への移行がなめらかに進行する、のかも知れない。しかし琉球弧の島じまは、最前線に位置しているのではない。


「南西諸島は最前線に位置している」…それは、琉球弧の島じまを「戦争に使ってもいい地域」「戦場にしても構わない地域」として扱うという事実を、国をあげてごまかすための方便だ。

それは、島じまを最前線に仕立て上げようとする側=加害者の問題を、最前線にされる側=被害者の問題にすり替えるものだ。

およそ150年にわたって日本政府は、日本軍・米軍・自衛隊は、私たちは、沖縄をどう扱ってきたか。武力で威嚇して「沖縄県」を設置した。「南西諸島防衛」を口実に土地を奪って軍事要塞化し、沖縄戦の戦場にした。さらに土地を奪って、アメリカの戦争の拠点基地とした。核ミサイルの攻撃拠点にもした。あらゆる基地被害・基地負担を押し付け続け、沖縄からの声は無視した。

このような歴史を経て、その上で「南西諸島は最前線」だと平気で言ってしまえる「本土」側の、植民地主義を内面化した視線こそが問題だ。それは、島じまを奪い、踏みにじってきた歴史をくり返す、沖縄戦をくり返す、あるいはもっとひどいことをする、ということにつながるものだ。


「島々を戦場にするな」という声が、琉球弧の住民から、「本土」の私たちに突き付けられている。その声に応えるには、「島々を戦場にしない/させない」と言うだけでは足りない。「島々を戦場にするなと言わせてしまっている現在の状況」に向き合い、そこに暮らす人たちが二度とそんなことを言わないですむ未来のために、私たちは行動したい。

琉球弧の島じまを戦略上の要所として利用するのか、しないのか。それは完全に「本土」側に責任がある問題であることを確認するために、私たちは「琉球弧の島じまは最前線に位置しているのではない」ことを宣言する。

決して、琉球弧の島じまを最前線にしてはならない。大国の狭間に位置する地域を、そこで生きる人びとの自己決定権を奪い、自然や文化や暮らしを奪い、軍事緊張にさらしてはならない。まず、島じまから奪ったものを、ひとつひとつ返していくこと…東アジアの平和はそこから始めるべきであり、私たちはそのための実効的な方法を模索し、行動を重ねていく。この宣言を、その前提としたい。


2024年6月27日 島じまスタンディング、STOP大軍拡アクション


司会

はい、宣言が終わりました!
それでは、島じまの方たちから、まず院内集会の順番通り種子島から…(種子島から抗議)…それでは南の方から、「与那国島の明るい未来を願うイソバの会」の…

〈後編〉に続きます。▶






写真:石井、Fujikoさん

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