もくじ◆◆◆◆入間基地と統合衛生訓練
◆◆◆◆◆踏みにじられる奄美の島じま
◆◆◆◆◆◆射爆撃場になった「神のいる島」
◆◆◆◆入間基地と統合衛生訓練
2022年3月、2千メートル級の滑走路を持つ航空輸送の要の基地「航空自衛隊入間基地」(埼玉県狭山市・入間市)に、「自衛隊入間病院」が開設された。
入間病院等の施設が造られた場所は「東町側留保地」という28haの米軍基地の跡地で、1978年の返還後は木々が生い茂り、広大な市民の憩いの森となっていた。留保地の使用優先権は入間市にあり、市の跡地利用計画もまとめられていた。
2011年8月、「防衛力の実効性向上のための構造改革推進委員会」は「防衛力の実効性向上のための構造改革推進に向けたロードマップ」をまとめた。「統合衛生」の分野では、「南西事態対処における傷病者後送の具体化」「南西事態対処における治療態勢の具体化」などについてロードマップが示された。2014年9月、防衛省は入間市に東町側留保地の利用を申し入れた。当時の田中龍夫市長は、この計画を議会にもかけずに受け入れてしまった。
自衛隊入間病院は、日本初の航空医学診療科が設置された「航空医学機能を有する病院」としてスタートした。原則、「自衛隊員及びその関係者のみ」を対象とする病院だ。病院と同時に「災害対処拠点」として造られた訓練場や運動場は「増援部隊を集結させる場所」でもあり、住民説明会の資料には1個師団(6~8千名)が展開した場合のレイアウト例も図示されている。
入間基地には、2021年から2022年にかけて大型輸送機C-2が3機配備された。(C-2には「空飛ぶICU」と呼ばれる機動衛生ユニットが搭載できる。小牧基地の航空機動衛生隊が採用している。)
自衛隊入間病院は、入間基地とセットで、南西シフトの後送態勢の拠点として…琉球弧を戦場利用する際に大量に発生する自衛隊や米軍の傷病者の、後送態勢の拠点として造られた。そして今回の「キーン・ソード」では、傷病者が発生する琉球弧の島じま~「沖縄医療拠点」の自衛隊那覇病院~自衛隊入間病院~「最終後送先」自衛隊中央病院をつなぐ「患者後送訓練」が行われる。与那国空港、新石垣空港、徳之島総合運動公園、福岡空港などの民間施設が輸送の拠点になる。
「防衛力の実効性向上のための構造改革推進に向けたロードマップ」2011.8より |
与那国島では、島民や観光客を島外に避難するための、日米共同「防災」訓練も行われる。
そのほかの「統合後方補給」に関わる訓練
◆◆◆◆◆踏みにじられる奄美の島じま
徳之島に軍事施設はない。しかし、昨年「特定利用空港・港湾」に指定された徳之島空港をはじめ、港や公園や山地など、34もの施設・場所が軍事訓練に利用される。
奄美大島と加計呂麻島に挟まれた大島海峡の北の出口に、江仁屋離島(えにやばなれじま)という小さな無人島がある。奄美群島国立公園に含まれており、湾状のビーチがある美しい島だ。この島を防衛省は勝手に「統合演習場」と位置づけた。そして2014年頃からここで、自衛隊の大規模な着上陸訓練が行われるようになった。2019年に奄美大島に2つの大きな自衛隊基地が開設(着工は2016年)するのに先立って、古仁屋港や名瀬港を拠点としながら江仁屋離島や奄美大島全域で島嶼戦争の訓練が行われるようになっていた。
奄美大島の次は徳之島だ、と言わんばかりに、自衛隊誘致への動きが進行する中で、2年前に「これだけの規模男訓練はなかなかできない」と自衛隊幹部が言っ たような訓練が、既に常態化している。喜界島では2023年3月に初めて日米共同訓練(「アイアン・フィスト20」)が行われた。沖永良部島には、今回の 「キーン・ソード」ではミサイル発射機などミサイル車両約9台が持ち込まれる。
今や、奄美群島全域が「統合演習場」であるかのようだ。
◆◆◆◆◆◆射爆撃場になった「神のいる島」
渡名喜島の目の前、渡名喜港から約4km沖合に浮かぶ入砂島は、全島が「出砂島射爆撃場」となっている。
入砂島には4つの御嶽があり、乱暴な言葉を使ったり、大声を出すと、祟りがあると言われていたという。渡名喜の住民はこの島を守り、毎年シマノーシ(島直し)の祭礼を行った。魚介類や海藻の宝庫でもあり、サンゴのリーフに囲まれた美しい島だ。
1945年、慶良間諸島に侵攻した米艦隊が入砂島に艦砲射撃を行い、米軍はこの島を占領した。そのまま占領が続き、1954年に射爆撃場として設定され、そのまま現在に至る。「神のいる島」は、ミサイルを撃ち込むための島になった。
今回の「キーン・ソード」では、陸上自衛隊、海上自衛隊、米陸軍、米海軍、米空軍、米海兵隊、オーストリア陸軍、カナダ陸軍が参加して「統合火力誘導訓練」が行われる。
コメント
コメントを投稿