国民保護法と与那国

 

(~平時の住民避難〜)

2004年 6月 「国民保護法」成立
2005年 3月 「与那国・自立へのビジョン」策定

2015年 9月 「戦争法」成立
2016年 3月 「与那国駐屯地」開設

2022年12月 「安保3文文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画)閣議決定
2022年12月 与那国島に地対空ミサイル部隊を配備し基地を拡張する計画が判明

2023年 3月 与那国町、国民保護法に基づく「避難実施要領のパターン」作成
2024年 6月 政府「国民保護に関する取組(沖縄県の離島からの住民避難)」公表
2024年 8月 与那国町「避難実施要領の概要」公表


■2004年と2005年

与那国島は、日本最西端の島、国境の島、と言われます。東京の真ん中から見れば、はしっこの、さいはての行き止まりの島のように見えるかもしれません。でも与那国島から見ると、西に台湾があり、東に八重山の島じま、その向こうに宮古・沖縄・奄美の島じまが連なり、台湾の向こうには中国大陸が広がり、南側にはルソン島をはじめとするフィリピンの島じまが連なっています。与那国島は、東アジアに開かれている島です。

「自立」「自治」、そして、自然と人間、さまざまな人と人、台湾や中国やアジアの国々との「共生」、という3つの基本理念を掲げる『与那国・自立へのビジョン』は、2005年3月に策定されました。

与那国島で、様々な世代の、それぞれの職業や立場の人たちが交じり合って、自分たちのことは自分たちで決めようと「自立へのビジョン」を練り上げていたちょうどその頃、東京の国会では、数々の「有事法制」がつくられていました。そのひとつである「国民保護法」は、2004年6月に制定されました。

与那国『自立・自治宣言』(町民大会で採択されたのは2004年10月3日)

■■与那国島から始まる

2006年9月ケビン・メア在沖縄総領事(当時)が「台湾海峡か尖閣諸島、あるいは八重山諸島で紛争が起きるような場合、米軍は作戦遂行の必要上、台湾とは目と鼻の先といっていい石垣島や与那国島の港を使用する必要が出てくる」と発言し、2007年6月に米軍掃海艇2隻が与那国島の祖納港に入港し、2008年1月に「与那国防衛協会」が結成され自衛隊誘致活動を始めました。「島嶼部への部隊配備」が初めて防衛大綱に明記された翌年・2014年4月、自立ビジョンを打ち砕くようにして、与那国島の自衛隊基地建設工事が着手されました。琉球弧の島じまを「最前線」に仕立て上げる作業が、与那国島から始まりました。

2015年9月、「有事法制」を原型とし、集団的自衛権の行使などを盛り込んだ戦争法が制定されました。国会前で多くの市民が「戦争ができる国になる法律」に反対の声を上げていた頃、与那国島の人たちは、自分たちの足元で「戦争するための基地」が造られていることを、戦争法と同じひとつの問題として訴えていました。その声を、「本土」の私たちは十分に受け止めることができなかったので、2016年3月、「与那国駐屯地」が開設されました。

その後、宮古島に2つ、奄美大島に2つ、石垣島に1つの自衛隊のミサイル基地が新たに造られ、沖縄島の勝連に地対艦ミサイル連隊が置かれ、馬毛島で基地建設工事が始まり、「台湾有事」をめぐる言説が活発化する中で日米共同作戦計画の原案がつくられ「安保3文書」が閣議決定されて「5年で43兆円」の大軍拡がスタートし、そしていま、琉球弧の島じまを「最前線」に仕立て上げる「南西シフト」は次の段階へと、島じまを奪い取る段階へと、向かおうとしています。それは、与那国島から始まるのでしょうか。

「おまわりさん2名と拳銃2丁だけ」の島に「沿岸監視という技術系の部隊」を配備する、当初はそういうふうに言われていましたが、2022年以降、航空自衛隊の警戒隊が配備され、初の日米共同訓練が行われ、地対空ミサイルの配備と基地拡張の計画が判明し、軍事利用のための与那国空港の滑走路延長と、樽舞湿原を掘り起こして比川に軍港を造る計画が発覚し、電子戦部隊が配備され、与那国の最高峰の宇良部岳山頂への映像監視装置設置計画が明らかになりました。そして、「武力攻撃事態等」に全島民を佐賀県に避難させることが検討されています。

 

■■■「先島」12万人を6日間で九州・山口へ

八重山の有人島:与那国島(与那国町)、西表島、波照間島、黒島、小浜島、竹富島、新城島上地島、新城島下地島、鳩間島、嘉弥間島、由布島(以上10島・竹富島)、石垣島(石垣市)
宮古の有人島
:宮古島、伊良部島、下地島、来間島、池間島、大神島(以上6問島・宮古島市)、多良間島、水納島(以上2島・多良間村)


八重山と宮古の20の島じまに暮らす人びと、「先島」と呼ばれる島じまの5市町村の全住民約11万人。それに観光客約1万人を加えた約12万人を、6日間で九州各県と山口県に避難させる計画(案)の策定が進められています。

「国民保護に関する取組(沖縄県の離島からの住民避難)」2024.6.3内閣官房副長官補 付 より

「国家安全保障戦略」(2022年12月閣議決定)には「国民保護のための体制の強化」が謳われ、「具体的には、武力攻撃より十分に先立って、南西地域を含む住民の迅速な避難を実現すべく、円滑な避難に関する計画の速やかな策定、官民の輸送手段の確保、空港・港湾等の公共インフラの整備と利用調整、様々な種類の避難施設の確保、国際機関との連携等を行う。」「こうした取組の実効性を高めるため、住民避難等の各種訓練の実施と検証を行った上で、国、地方公共団体、指定公共機関等の連携を推進」…などと明記されました。日本の戦場化に備えた「シェルター」整備計画や、避難訓練などを通して住民避難計画を練り上げる作業が、琉球弧を中心に全国で活発化しています。

与那国島では2022年11月に、沖縄県内で初となる武力攻撃事態(弾道ミサイルの発射)を想定した与那国町主催の国民保護訓練が行われました。2023年3月には、与那国町は「避難実施要領のパターン」を作成し、同年9月に「国民保護に係わる島外への避難要領についての与那国町意見交換会」が、祖内集落で開かれました。

このような避難計画の作成は、国民保護法に基づいて行われています。

2023年、沖縄県と沖縄県多良間村と熊本県と熊本県八代市が連携し、多良間村の住民約1千人が八代市に避難するモデル計画を作成しました。これを参考として、九州各県と山口県は、「5市町村」の「避難住民の受入れに係る初期的な計画」を今年度中に作成することが求められています。

■■■■南西シフトの一環としての国民保護法

国民保護法の正式名称は、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」といいます。国民保護法は、2003年6月に成立した〈有事関連三法〉の一つである「事態対処法」(正式名称は「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」、2015年9月「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」と改称)の枠組みの下に、2004年6月に〈有事関連七法〉の一つとして制定された「有事法制」(戦争法)です。「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」「緊急対処事態」(大規模テロなど)、の3つの事態について、国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするための対処を定めています。「避難」「救援」「武力攻撃に伴う被害の最小化」をその柱としています。(2015年の戦争法で事態対処法には「存立危機事態」への対処が新設されましたが、国民保護法には存立危機事態への対処についての規定はありません。)


内閣官房 国民保護ポータルサイトより

1996年の「日米安全保障共同宣言」における、東西冷戦後も日米安保が重要であるという認識のもとに、「安保再定義」が進められていきました。1997年の日米ガイドラインの19年ぶりとなる改定で「日本周辺地域における事態への日米共同対処」が謳われ、1999年に「周辺事態法」が制定されました。2000年、15年ぶりに改定された陸上自衛隊の教範「野外令」には、「島嶼防衛作戦」が初めて明記されました。2004年の防衛大綱には「島嶼部に対する侵攻への対応」が書き込まれ、2005年の日米合意「日米同盟 未来のための変革と再編」は、日本は島嶼部への侵攻等への対処に自らを防衛し、周辺事態に対応する、としました。

東西冷戦後の日米安保体制が、次第に、「台頭する中国」との覇権争いのための、日本の「島嶼部」(=琉球弧)が戦場になる(戦場として使う)ことを想定した自衛隊主体の戦争のための軍事同盟となっていく、そういう流れの中の、「南西シフト」のはじまりの有事法制として、国民保護法は制定されました。

■■■■■国際人道法と国民保護

「安保3文書」は「継戦能力」の強化を掲げています。少しでも長く戦闘を継続できるようにする、そのようにして、沖縄戦における持久戦のような、長引かせる戦争が構想されています。アメリカ海兵隊のEABO(機動展開前進基地作戦)も、陸上自衛隊の領域横断作戦も、「作戦当初から戦域内に所在する『スタンド・イン・フォース』として、あらゆる領域からの攻撃に対して部隊を防護し、持久して作戦を遂行する」(陸上自衛隊ホームページより)という特徴があります。こうした作戦をベースに、40もの島じまに臨時の攻撃拠点設けて分散展開するという、琉球弧を「戦域」とする日米共同作戦計画がつくられています。

持久戦のために、新型ミサイルの開発と大量生産、それを全国に分散して保管するための弾薬庫の増設が進められています。そして大量の物資の保管や補充と、増援部隊等の機動展開や傷病者の後送のために、PFI(民間資金等活用)船舶の利用や、「特定利用空港・港湾」の指定と軍事利用に向けた整備が推進されています。

民間船舶、民間空港、民間港湾、一般公道などの軍事利用。それらがすべて、国民保護計画における住民避難と重なる恐れがあります。

2004年の「防衛白書」は、「国民の保護のための措置は、基本的には、国際人道法の主要な条約の一つであるジュネーヴ諸条約第1追加議定書が規定する『文民保護』に該当するもの」としています。国際人道法は、「軍事目標主義」「軍民分離の原則」という考え方を採用しています。これは、攻撃する側が軍事目標以外攻撃してはいけないということと同時に、防御する側も軍民をきちんと分離させなければいけないということです。

沖縄島の面積の約15%を、米軍基地が占めています。そこは120万人以上の人びとが暮らしている島です。宮古島や石垣島などでは、人びとの生活圏内にミサイル基地が造られ、人びとの枕元に弾薬庫が置かれミサイル弾体が収納されています。このような琉球弧において、武力攻撃予測事態が認定されて住民避難が指示されたとしたら、軍民分離の原則が守られるということが、果たしてあり得るでしょうか。

日米の戦争構想では、琉球弧の島じまは「作戦当初」から「戦域」とされており、すでに「スタンド・イン・フォース」として部隊が展開しています。

特殊標章:国民保護に係る職務等を行う者、国民保護措置のために使用される場所、車両、船舶、航空機等に使用される。ジュネーブ諸条約及び第1追加議定書にしたがって保護される対象として識別される。

2005年3月、政府は「国民の保護に関する基本指針」を閣議決定しました。国民保護法と基本指針に基づき、指定行政機関地方公共団体指定公共機関指定地方公共機関は、武力攻撃事態等に備えて、「国民保護計画」「国民保護業務計画」を策定することが義務付けられました。

2023年3月16日、沖縄戦で米軍の上陸地となった村の村民感情を考慮して、国内で唯一国民保護計画を策定していない自治体だった沖縄県読谷村が、国民保護計画を策定しました。知花正総務課長は「読谷村は平和外交を推進してきたが、時代背景を含めて判断した」(琉球新報2023.6.13)と話したそうです。

■■■■■■ライフライン悪化と住民避難

人口が増え、島が活性化します! 給食費が無料になります! 陸上競技場が出来ます! ごみ焼却施設が出来ます!…与那国島に基地が出来る前、自衛隊誘致に賛成する人たちは、そのように宣伝しました。


「与那国ごみ焼却施設」が、約21億円の「防衛施設周辺対策事業補助金」を使って造られました。2021年8月から共用が開始されています。最新の設備です。しかし自衛隊関係者以外の人口が減っていて、作業員が足りず、ごみを収集する人手も足りないそうです。小中学校の給食費は無料になりましたが、給食を作る人が足りないといいます。

与那国島のライフラインが急速に悪化しています。島内唯一の特別養護老人ホームが、閉鎖されます(11月末閉鎖へ、との報道…9.13八重山毎日新聞他)。保育士不足のため、保育所に入所できない待機児童が13人いると報告されています。島内で歯科治療を受けることが出来なくなりました。農業は衰退し、耕作放棄地が増え、稲作を担う人がいなくなったそうです。こうした中で島を出て行くことは、島に残る人の負担をさらに増やすことになります。だから、誰にも知らせず島を出て行く人が、後を絶たないといいます。

現在、自衛隊とその家族が与那国町の人口に占める割合は、約2割です。このまま計画通り新部隊配備が進められ、もともと住んでいる人が減っていったら、数年後には5割近くになるのではないかと言われています。

島の西側半分近くを軍事化してしまうような計画と同時に、人びとが地に根をおろして暮らしていくことが困難な状況が作られています。こうした状況の中で追い討ちをかけるように進められているのが、全島民・約1700人を島外に避難させる計画です。

『はいさい(沖縄防衛局広報)』第185号、2021.10.1 より
 

■■■■■■■有事の前に避難するということ

戦争が始まってしまったら島外への避難は、あまりにも困難で危険です。軍民混在の状況も避けられません。だから、「武力攻撃より十分に先立って」(国家防衛戦略)の避難が求められています。十分に先立って、とはどのような状況でしょうか。

例えば、与那国島に就航している琉球エアーコミューターは、国民保護法に基づく「指定地方公共機関」として策定した「国民の保護に関する業務計画」の中で、避難住民を運送する指示が出された場合、「安全が確保されていると認められる場合でなければ指示を行ってはならない」とする国民保護法第73条第3項の規定に鑑み、「安全が確保されていることを前提に」所要の措置を実施するとしています。安全でなければやらない、と言っているのです。

与那国島の1700人が、八重山・宮古の12万人が、安全に迅速に避難できる状況とは、「平時」しかあり得ません。国民保護法が対象とするのは「武力攻撃事態」や「武力攻撃予測事態」等ですが、防衛研究所の政策研究部付主任研究間の林浩一氏は、「住民避難についても、事態認定前に、政府が、強制には渡らない『住民の移動』の計画を整理・調整し、それに沿って具体的な『移動』を実施することは十分可能だろう」としています(NIDSコメンタリー第243号『国民保護の経緯、現状、方向性ー国民保護の制度と運用①』2022.11.1※太字は引用者)。

そうだとすれば、安全を名目に、政府にとって都合の良いタイミングで、住民の「移動」が実施される可能性があります。その後戦争にはならなかったとしても、いつ、島民が島に戻ることができるのでしょうか。あるいは、あまりにも大規模な住民の移動(疎開)は、「仮想敵国」にとっては日本がこれから戦争を開始するという合図であり、住民の移動自体が戦争を引き起こす引き金になるかもしれません。


なぜいま、全島民の島外避難計画、なのでしょうか。琉球弧の軍事化が、これほどまでも、進められました。島じまを守るためでも、日本を守るためでもなく、大国の、あるいはその中の一部の勢力の覇権や利権のために島じまを利用する構想が、ここまで形になり、「台湾有事」を口実とする新たな日米共同作戦計画を導き出して、その戦争態勢を5ヶ年計画で仕上げていこうという段階に来て、日本政府は新たな「沖縄戦における住民問題」に直面しています。

石垣島の平和と自然を守る市民連絡会は、『2023年5月25日 防衛省宛提出の要請書(質問)に対する回答とコメント』の中で、「島外避難の計画とそれを支える制度的枠組みやシェルターの整備がほとんどない状態で、小さな島に対艦、対空ミサイル(近い将来には対敵地ミサイルも)を主要装備とする駐屯地の建設を先行させたのは、順序が全く逆だったのではないか」と質問し、「南西地域への部隊配備が始まった2010年代初頭から既に10年以上が過ぎているが、その間、島々の軍事化が急速に進められる一方、国民保護体制の整備はほとんど放置されてきた。避難やシェルターの必要性が叫ばれるようになったのは、主なミサイル基地が完成時期を迎えたごく最近になってからのことである」と指摘しています。

なぜでしょうか。避難計画やシェルター整備が先行したら、住民は警戒するでしょうし、「抑止力(一般的な意味での)のため」という口実が疑わしくなり、基地建設着手が難しくなります。石垣島での「アセス逃れのための0.5ヘクタール着工」が示したように、まずは何が何でも着工、土地取得のめどが立っていなかろうが、環境への影響が分かっていなかろうが、住民がどう考えていようが、まずは着工、そして未完成でもなんでもとにかく基地開設に漕ぎ着けたら、次に増強、さらに増強、というのが、一連の琉球弧への自衛隊配備に一貫した手法です。順番が逆なのではなく、その先のゴールとして設定されているのが、国民保護を口実に島全体を奪い取る、ということだったとしても、何のふしぎもありません。

有事の前に避難するということは、軍の作戦のために島を明け渡すということです。

■■■■■■■■与那国町の避難実施要領

(以下は、…2024年1月、沖縄県庁で、沖縄県国民保護共同図上訓練を実施。沖縄県、宮古島市、多良間村、石垣市、竹富町、与那国町、内閣官房、消防庁、国土交通省、沖縄総合事務局、沖縄県警、指定公共機関、海上保安庁、第十一管区海上保安本部、防衛省、沖縄防衛局、自衛隊、などオンラインを含め45機関、220名が参加…そこで策定され2024年8月に公開された、「国の避難措置の指示・沖縄県の避難の指示・与那国町の実施要領」についての資料と、石垣島の平和と自然を守る市民連絡会の上述の資料を参考にしました。)

各空港の駐機スポットの最大限の活用や船舶の臨時定員の調整等により、平時の2倍を超える、1日2万人の「島外輸送力」を確保できる見込みです。12÷2=6。約12万人の八重山・宮古の住民等は、6日程度で九州へ避難できます。

与那国町の全住民1,697人は、残留者を除き、概ね1日で佐賀県に避難します。佐賀市と鳥栖市が受け入れ先の候補となっています。可能な限り航空機を活用し、船舶は、航空機による避難が困難な要配慮者とその支援者、ペット同行避難者などが活用します。町が確保した島内バス会社のバス4台(定員合計161名)が、町民を空港と港へ運びます。その際は交通規制が行われ、避難のために許可を受けた以外の車両は通行できなくなります。

避難の実施単位は「組」となります。与那国町には3つの集落があり、祖納集落には3つの公民館、久部良集落と比川集落にはそれぞれ1つの公民館があります。各公民館で、1つから3つの組をつくります。町内で合計9つの組に分かれ、9人の組長が避難誘導の主体になります。

航空機は、与那国空港で運用可能な最大機(B738:定員157名)を6機確保し、1日11便を運行します。最大、1日1700名以上を輸送できます。与那国空港から、130分で福岡空港に到着します。

船舶は、久部良漁港からは福山海運の「フェリーよなくに」が、石垣-与那国間を1日2便運行します。所要時間は4時間、臨時定員を240名とします。祖納港からは壱岐・対馬フェリーの「みかさ」が、1日2便運行します。臨時定員を370名とします。石垣港から宮古島の平良港経由で那覇港へ。那覇から定期航路を使って鹿児島港などへ向かいます。

航空機で避難する場合、機内持ち込み手荷物は1個(20cm×45cm×35cm以内)と身の回り品1個、合計10kgまでです。預入荷物は、なしです。長期避難に必要な荷物は、別送する方向で検討します。

国民保護における避難指示については、法的な義務は生じますが、強制的に避難させることはありません。避難の指示に従わない住民に対しては、輸送手段の最終便までに避難していただくよう説得に努めることになります。なお、最終便以降のライフラインの確保は保障されておりません。

自衛官約150名は残留します。そのほか、役場職員8名と、駐在員2名、計10名が残留する見込みです。避難完了後、電気の供給は停止になる見込みです。ガスの供給も停止になる見込みです。通信設備は、電気の供給が止まれば遮断されます。水道は、停電後12~24時間後には完全断水となります。非常用発電機の燃料供給ができれば、給水は継続できる見込みです。

約600頭の家畜については、牧場への放牧などを検討しています。補償についても、今後検討されていくことになります。

武力攻撃による国民の被害の大きさについて予測することは困難であるため、いわゆる戦災補償について法律であらかじめ定めることは、極めて困難です。補償等の問題については、武力攻撃事態終了後の復興施策のあり方の一環として、政府全体で検討すべきものと考えられます。

避難先では、県知事が中心となって、市町村や日本赤十字社と協力して救援を実施します。宿泊場所や食品、医療品などを提供したり、行方不明になったり家族と離ればなれになった人たちのために安否情報の収集や提供を行います。

なぜ与那国が危険で九州なら大丈夫なのかだって?!、これはあくまでも避難要領等を検討するための想定であって、要避難地域や避難先地域を仮に指定したものであって、特定の事態を想定しているものではなくて、台湾有事も港湾整備計画も何も関係ありません!!


「与那国町 避難実施要領の概要」より

■■■■■■■■■2004年と2005年と2024年

2004年と2005年。「国民保護法」と「与那国・自立へのビジョン」は、ほぼ同じ時期に、別々の場所でうまれました。そのふたつがいま、せめぎあっています。

「与那国・自立ビジョン」は、島が直面している厳しい現実を直視しながら、策定されなければならない
(「自立ビジョン策定にあたっての政策的認識と重要課題」基本的見解 より)
与那国・自立へのビジョンは、自衛隊配備によって踏みにじられてきましたが、いま、厳しい現実の中でこそ、その価値が見直されるべきものだと思います。困難に見舞われながらも、このビジョンは実現に向けた過程にあります。だから、「本土」の側の私たちが、与那国島を奪わないこと。奪うことをやめる。

『与那国・自立へのビジョン 自立・自治・共生〜アジアと結ぶ国境の島YONAGUNI』2005年3月 与那国・自立へのビジョン策定推進協議会 より

 

【与那国島を奪わないための12.9新宿アクション〜琉球弧の軍事植民地化にNo!】
12月9日(月)19:00〜20:00、JR新宿駅東南口
呼びかけ:島じまスタンディング、STOP大軍拡アクション
https://shimajimastanding.blogspot.com/2024/12/129.html
 

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