勝連・うるま④ 保安林問題2・「勝連分屯地」を森林に戻せ!

 

連載④

▶勝連・うるま① ミサイル戦争態勢へ/うるま市ってどんなところ?/訓練場計画
▶勝連・うるま② 中城湾のいまとむかし/米軍統治下の勝連半島/2024年3月10日

▶勝連・うるま③ 保安林問題1・踏みにじられてきたもの


勝連分屯地の保安林問題 2


 島である、という環境の中で人びとや生きものたちが暮らしていくためのに、森林は大切な役割を果たしている。その中でも特に重要だと認められるものが、保安林に指定されている。そういう場所を、島を戦争に利用するために外からやって来た勢力…日本軍ー米軍ー自衛隊…が占領し、踏みにじってきた。その事実を、なかったことにしよう、という調整が、防衛局と沖縄県との間で進められている。そこを新たな日米の戦争戦略の重要拠点として利用するために、「解除すべき保安林」にしてしまおうと。…今年1月31日、保安林の「処理方針」が、沖縄県より示されました。



指定解除の要件


 勝連分屯地の半分近くは保安林が違法開発された上に造られています。保安林指定区域は森林に回復されなければならず、地対艦ミサイル部隊配備などできません。しかし沖縄防衛局は、保安林を指定解除させることを前提に、配備を強行しようとしています。解除させさえすれば、この問題がなかったことになるとでも思っているのでしょうか。

 1月31日、沖縄県は、「保安林の解除」以外に是正方法はない、という「処理方針」を示しました(「チョイさんの沖縄日記」2024.1.31)。くわしくは後述しますが、とんでもないことです。それでは、どうすれば保安林を指定解除できるのでしょうか。

図1 林野庁ホームページより

図2 沖縄県ホームページより

  特別な理由がない限り、保安林指定を解除することはできません。ただし、「1.指定理由が消滅したとき」「2.公益上の理由により必要が生じたとき」この2つの場合に限り、解除が認められる場合があるとのことです。

 沖縄県の説明では、解除の理由は「1.指定理由が消滅したとき」に該当するのだそうです。
 
 「受益の対象が消滅したとき」「自然現象等により保安林が破壊され森林に復旧することが著しく困難と認められるとき」「保安林の機能に代替する機能を果たす施設が設置されたとき」などが指定理由の消滅に該当するとしています(図2の1)。森林がなくなったからといって、保安林に指定した理由までがなくなるわけではありません。森林に復旧することが著しく困難とは思えません。どれにも該当しません。

 50年にわたって、防衛局・自衛隊は、保安林が伐採・形質変更され基地になっている事実を放置したまま(意図的かどうかは別として)、森林に戻すこともせずに、そこを使ってきました。そのうえ、形質変更という森林法違反行為を犯しました。その事実が明るみに出たとたんに、「指定理由が消滅」するなんてことが、通用するのでしょうか。

「保安林の指定解除事務等マニュアル(地熱編)(令和5年10月改訂版)」林野庁治山課 より

  保安林の転用解除の審査に当たっては、まず、対象保安林を「第1級地」「第2級地」に区分するとのことです。第1級地は、「原則として、解除は行わないものとする。」としています。

 第2級地についても、「やむを得ざる事情があると認められ、かつ、当該保安林の指定の目的の達成に支障を来さないと認められる場合に限って」と、厳しい条件が付されています。勝連分屯地の保安林はどちらに該当するのでしょうか。


 …その判定には現地調査が必要とのことですが、勝連分屯地の保安林は海岸に近接し、林帯の幅は50~80mだということなので、第1級地に該当するはずです。指定解除の要件を満たすにはほど遠いと思われます。



「処理方針」


 昨年8月18日の現地視察会で、沖縄防衛局長は(保安林に)指定されたままになっている」という表現をくり返した、それは「指定されている」という事実を自分に都合良くねじ曲げるものだ、と前回の記事(勝連・うるま③)に書きました。しかし、それがその通りに、防衛局に都合良く事実がねじ曲がろうとしています。

 今年1月31日の「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」の沖縄県との交渉が行われ、そこで沖縄県から、驚くべき「処理方針(保安林の取り扱い方針)」が示されました。これは昨年9月に沖縄県が示した見解に対し市民の会が再検討を求め、それを踏まえ「知事、副知事との調整を行った」ものとして出されたものです。


  文書は、『自衛隊及び米軍基地内の保安林の取り扱い方針』というタイトルです。つまり、私は驚いたのですが、今まで決められていなかったのか!ということです。米軍施設内の保安林をどう扱うのか、返還された場合はどう扱うのか、今まで70年以上もの間、決められていなかったのか、「市民の会」が指摘するまでうやむやにされてきたのか、と。それをこの機に、今回の防衛局の要望をのむ形で密室で決めてしまうのだとしたら、それは勝連の問題を超えた大問題なのではないでしょうか。


  米軍による保安林の改変行為は、国内法の適用を受けない。だとすると、米軍が勝手に米軍基地内の保安林を改変することを禁止できる法的な手段がない。だから、米軍に対しては適切な取り扱いを「要請」することにする(それしかできない)。それ…文書の(3)…は、理解はできます。

 問題は文書の(1)、今回の勝連が該当するケースです。米軍により改変され、改変された当時から現在まで森林ではない場合。その場合は、知事の認定により解除する、それしか「是正方法」はないのだと。当該案件についての説明では、「米軍により改変された時点において、国内法に基づく保安林ではなくなった、と解する以外に方法がない」と言っています。

 一方、文書の(2)では、米軍に改変されていない保安林は、返還後は通常の保安林と同様に扱うことが示されています。なぜ、改変されなかった場合は「保安林のまま」なのに、改変された場合は「保安林ではなくなった、と解する以外に方法がない」のでしょうか。二重基準ではないでしょうか。改変された場所もされなかった場所も、保安林に指定された理由は同じであり、片方を保安林だと認めるならば、もう片方も当然認めるべきではないでしょうか。

 文書の(3)では、「ただし、米軍基地内の保安林を含めた既存の森林は、公益的な機能を有しており、適正に管理することは重要」としています。当然その通りで、米軍に対しては「監督処分」を科すことはできず「要請」しかできないとしても、日本に返還されたものについては、法的にも「公益的な機能」を重視し「適正に管理」できる状況になったのだから、米軍に勝手に伐採・改変された保安林は、国内法の適用のもとで森林に回復させれば良い、というだけの話ではないでしょうか。

 
 「処理方針」は、「米軍が伐採して森林がなくなると保安林に指定されていた理由も消える。だから、そこを森林に戻しても、もはや保安林として機能しない。」と言っているようなものだと思います。

 そして、日本軍が最初に保安林を伐採したという事実を無視しています。1975年に、再度、「風害の防止」を目的に保安林に指定されたという事実も無視しています。

県の処理方針は、政府、自衛隊に過剰に忖度したものと言わざるを得ない。
(▶「チョイさんの沖縄日記」2024.1.31より)
https://blog.goo.ne.jp/chuy/e/1bcd6d6c8a4e4b8ce444e600336c158a

 『自衛隊及び米軍基地内の保安林の取り扱い方針』は、沖縄県内でこれから適用させていく、というものです。勝連以外にも、こうしたケースが隠されているのかもしれません。




なかったことになる


 3月12日、勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊配備に向けて車両約20台の搬入が強行された2日後、「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」は「処理方針」の撤回を求め、県に申入れを行いました。しかし副知事は、「県としての最終的な方針をまとめた」とし、担当課長は「当該保安林はやはり解除すべきである」と明言したとのことです。(「チョイさんの沖縄日記」2024.3.12)

 さらに、「すでに2月22日には防衛局と保安林解除に向けた事前相談に入っている」と、解除のための具体的な手続きが始まっていることが明らかになったというのです。

 また、「米軍が改編した時点や、1975年の保安林指定施業要件の段階で保安林の解除手続きをする必要があった」とも説明したそうです。

これでは、1975年に屋良知事が告示した指定施業要件が間違いだったということになる。知事が正式に告示し、官報に掲載した処分を50年近く経ってから「間違い」とすることなど通用しない。遡って屋良知事の処分を取消す手続きをするというのか。

1975年時点で、この一帯が保安林に指定されていたことは明らかであり、その後の陸上自衛隊の土地の形質変更は森林法違反である。当然、現状回復を命じなければならない。

(▶「チョイさんの沖縄日記」2024.3.12より)
https://blog.goo.ne.jp/chuy/e/9321c81b2010724e8d6cad4f7158b0d3

4つの保安林開発をなかったことにする処理方針

  保安林が「解除すべき保安林」になり、およそ百年の間に行われた日本軍・米軍・自衛隊による4通りの伐採・改変行為が、問題ないものとして処理されようとしています。
 
 辺野古の設計変更承認の「代執行」、「特定重要拠点空港・港湾」指定への動き、地方自治法改定(案)、などなど、戦時体制へ向けた地方自治に対する圧迫は、強まるばかりです。沖縄県はこのまま、琉球弧を「戦域」とする戦争態勢づくりの、その最も重要な局面で、戦争準備に協力してしまうのでしょうか。


「勝連分屯地」を森林に戻せ!

▶参考「チョイさんの沖縄日記」…タグ〈南西諸島軍事強化問題〉
https://blog.goo.ne.jp/chuy/c/1772c3df4a575f17166ae5aa9b36d8da
 


 以上、勝連・うるま①~④でした。

 3月10日、地対艦ミサイル部隊関連車両が陸揚げ、勝連分屯地へ搬入。3月14日未明、那覇空港に空輸されていたミサイル発射機などの車両が勝連分屯地へ。3月21日、地対艦ミサイル部隊が勝連分屯地に発足する計画。3月30日、勝連分屯地で新編成式典が開かれる予定。

…というふうに進んでいますが、関連工事は終わっていません。保安林解除は許されるはずのないものです。ミサイル弾体は搬入できません。本格的な部隊運用はできません。

◆3月18日(月)18:00~19:00、官邸前行動を予定しています。
【勝連をもう2度とミサイル半島にさせない!】
ー与那国島、石垣島、波照間島、宮古島、下地島、北大東島、久米島、入砂島、伊江島、沖縄島、沖永良部島、徳之島、奄美大島、喜界島、臥蛇島、種子島、馬毛島、九州島…島じまを奪って戦争をつくるな!

呼びかけ:島じまスタンディング、STOP大軍拡アクション
▶呼びかけ文
ぜひ、ご参加ください!



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