〈展示報告〉「琉球弧の島じまは最前線に位置しているのではない展」



 5月8日(水)~12日(日)、埼玉県草加市のCafe&Galleryで開催された「沖縄ゆんたくin草加 2024」で、島じまスタンディングは今年も展示を行いました。



壁面1 琉球弧の島じまって どこにあるの ?

 
▶そこは南西諸島という日本の南西地域である/国境の離島である 台湾にとても近い/尖閣諸島がある/中国の艦船が太平洋に進出する際に頻繁に通過するところだ

▶最前線に位置しているのだから 島じまの軍備強化は 仕方ない ???


 
壁面2 琉球弧 の島じまは「最前線に位置している」のではない

 
▶与那国島/波照間島/石垣島/下地島/宮古島/久米島/入砂島/伊江島/沖縄島/北大東島/沖永良部島/徳之島/臥蛇島/奄美大島/喜界島/馬毛島/種子島/九州島






▶2015~2016年 種子島、沖縄島、久米島、宮古島、石垣島に、準天頂衛星システム管制局設置(その後も増設)→ミサイル誘導態勢

▶与那国・奄美・宮古・石垣…この10年で新基地の造られた全ての島で、基地拡張・増強の計画

▶2024年~米陸軍、インド太平洋地域に地上配備型の中距離ミサイルの展開を始める方針

▶「沖縄県・先島諸島住民の九州各県への避難計画」2024年度内策定へ

▶地対艦ミサイル(※南西シフトの主力)射程延伸・量産計画…12式誘導弾「能力向上型」、現行の200kmから1000kmへ、2026年度地上発射型運用開始を目指す

▶島嶼防衛用高速滑空弾部隊等 琉球弧に配備計画…2026年度早期装備型運用開始、極超音速誘導弾2031年度配備を目指す

▶米国製トマホーク400発購入計画…2025年度配備開始の方針


▶人びとの大切なものを、騙して、奪い取って、踏みにじる。そして島を、作戦の遂行に最適なかたちにつくり変える。ひとつひとつの島で、そういうことが行われています。


 
壁面2-2 「最前線にしない」こと


▶たとえばウィキペディアで「沖縄県」を引くと、「海上輸送路(シーレーン)及び軍事的要地(第1列島線)として重要な場所に位置し、多数の在日米軍基地が存在する。」と書かれています。

▶「ここは国防の最前線だ。緊張感を持って任務に当たってほしい」
2016.4.7 若宮健嗣防衛副大臣(当時)、航空団「第9師団」新編の記念式典で訓示。空自那覇基地で。

▶「宮古島はわが国防衛の最前線だ」
2019.4.7 岩屋毅防衛大臣(当時)、開設直後の宮古島駐屯地を視察して訓示。

▶「石垣島をはじめとする先島諸島は、わが国防衛の最前線に位置します」
2023.4.2 浜田靖一防衛大臣(当時)、石垣駐屯地開設の記念式典で。 

▶そこには 重大な 問題のすりかえがあります。


▶「南西諸島は最前線に位置する」という「本土」側の視線とは…


 
壁面2-3 「台湾有事」について すこしだけ

 
▶中国にとっての:「ひとつの中国」「核心的利益」
▶アメリカにとっての:中国包囲の重要拠点:バシー海峡ミサイル封鎖
▶日本にとっての:軍拡のネタ、琉球弧の最前線基地化と戦争計画

▶台湾の人びとにとっての…


 
壁面3 「保良だより」(Fujikoさんの遠隔リポート)より 2024年4月


 
▶「毎日のようにゲート前に行くのは、
この地域は無人島ではない!
わたしたち住民が暮らしている、
ということを伝えるためです。」
(下地薫さん 2023.9.26)



壁面4-1 島じまを守るためではない 国を守るためですらない


東西冷戦後の日米安保年表=拡大してご覧ください
 
▶主権 ではなく 勢力圏 をめぐる暴力


壁面4-2 官邸前行動を呼びかけています。ぜひご参加ください!







参考


壁面5 奄美大島 浸透する自衛隊(写真:陸上自衛隊 奄美・瀬戸内twitterより)


 

チラシ・物販など

5月8日:うたとギャラリートーク(島じまスタンディング)

うたとギター:Fujikoさん




最終日:のんのレポートと水沢澄江さん(辺野古ぶるー)お話会

のんの外観

 
5月12日の「お話会」で、以下宣言が採択されました。

 
 
5.12琉球弧の島じまは最前線に位置しているのではない宣言in草加

琉球弧の軍事化(南西シフト)のことがほとんど報道されない、だからひとりでも多くの人に知ってもらいたい、という思いでいろいろやってきました。でも状況は変わりつつあります。

東西冷戦後・ソ連解体後「再定義」された日米安保体制のもとで、2000年頃「島嶼防衛作戦」の策定としてはじまった自衛隊の「南西シフト」は、2010年頃から本格的に動き始め、与那国島、奄美大島、宮古島、石垣島に次々と新基地が造られてきました。そして2022年12月の「安保3文書」閣議決定を経て、「南西シフト」は本格的な対中国戦争態勢として、次の段階へと向かっています。(一昨日、5月10日には自衛隊「統合作戦司令部」の今年度内の設置に向け、防衛省設置法などの改定案が成立。米軍と自衛隊の「相互運用性」強化が進む。)

「南西シフト」が「第二段階」へと向かい、全国規模の戦時体制づくりが進められる中で、危機煽動も浸透し、「南西諸島周辺で緊張が高まっている」「南西諸島は最前線だ」という認識が急速に広がっています。そうした状況がつくられて、その上で、「でも安心して下さい。対策はきちんと出来ています」というふうに琉球弧の軍事化がお披露目されていくのだと思います。

だから島じまの軍事化を、「どのように」伝えるか、が重要になると思います。

昨年の展示では、「おかしいと思いませんか?」という問いかけを軸に構成しました。アメリカ、日本、中国。争っているのは大国同士なのに、その争いが生む暴力が向けられるのは琉球弧の島じまなどの「大国の狭間」の地域なのです。おかしいと思いませんか?と。

今年は、「南西諸島は最前線に位置している」という認識そのものを問題にしました。それは極言すれば、「本土」の島じまへの視線のあり方が、戦争をつくってしまう、という問題です。

「南西諸島は最前線に位置している。だから軍備強化は当然だ/仕方ない。」
そんなふうに、島じまの軍事化が正当化されているように思います。でもそのような認識は、あえて島じまを最前線にすることを選んだ「本土」側・最前線に仕立て上げる側=加害者の問題を、最前線にされる側=被害者の問題にすり替えるものです。

およそ150年にわたって、日本政府は、日本軍・米軍・自衛隊は、この島じまをどのように利用してきたのか。あたかも、あらかじめ「南西諸島は最前線」であるかのような認識は、この歴史を無視したところにしか成り立ちません。その時々の統治権力の軍事戦略・方針にしたがって、常に最前線として利用してきた、戦場にまでした。それにも関わらず、「南西諸島は最前線」と平気で言ってしまえる「本土」側の《植民地主義を内面化した》視線こそが問題です。

それは、島じまを踏みにじってきた歴史をくり返す。沖縄戦をくり返す。あるいはもっとひどいことをする。ということにつながる問題です。

琉球弧の島じまを最前線にしない。「大国の狭間」の地域の人びとが、軍事緊張にさらされることなく、自己決定権を侵されることなく、暮らしていけるようにする。東アジアの未来の平和は、そこから始めるべきだし、そこからしか始まらないと思います。

だからそのためにいま、「本土」と呼ばれる島に住む私たちが、「琉球弧の島じまは最前線に位置しているのではない」ことを宣言することが必要だと思いました。
 
 
このたびはご来場ありがとうございました。2024年5月12日

展示プランより


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